
お久しぶりです。かなりブログが空いてしまいました。
皆さんこれまでのブログ内容は覚えておられますでしょうか?(泣)
今回はワクチンに関してお話します。
これまで呼吸器ブログの方で「気管支喘息」、「COPD」、「間質性肺炎」と肺の代表的な病気についてお話してきましたが、最後の間質性肺炎のコラム③で、「肺炎予防のために打っておいた方がよいワクチン」について少し触れたのを覚えていますでしょうか?
具体的には…
肺炎球菌ワクチン、RSウイルスワクチン、インフルエンザワクチン、コロナワクチン などでした。
今回は、間質性肺炎の人も、そうでない中高年の方も、とりあえず打っておいた方がよい(と私が考える)「肺炎球菌ワクチン」について、お話ししたいと思います。
さて、まず一般的なお話ですが、肺炎は日本の死因の第5位に位置しており、高齢者の誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)も含めると第3位となっています。さらに、肺炎で亡くなる方の95%以上が65歳以上の高齢者であり、高齢になるほどリスクが高くなります。また命に関わるだけでなく、肺炎での入院をきっかけに体力や筋力が低下しその後の生活に影響する(ADLが低下する)ことも少なくありません。「肺炎をきっかけに衰弱した」というケースは実際の診療でもよく見られます。
そしてこの市中肺炎の原因として最も多い細菌が「肺炎球菌」なんですね。この菌は健康な人の鼻やのどにも存在していることがありますが、加齢や持病、疲労などで免疫力が低下すると肺炎を引き起こします。そのため、高齢者では「かかってから治す」よりも「かからないように予防する」ことがとても重要になります。
そしてこの肺炎球菌の予防の中心となるのがそう、「肺炎球菌ワクチン」です。近年このワクチンは大きく進歩し、現在は主に以下の3種類が知られています。
・プレベナー20(PCV20) (当院では¥11,000)
・キャップバックス(PCV21) (当院では¥14,500)
・ニューモバックス(PPSV23)(当院では¥8,000)
ニューモバックスはこれまで長い間使用されてきた古い(=歴史ある)ワクチン、それ以外は比較的新しいワクチンです。特にプレベナー20とキャップバックスは「結合型ワクチン」と呼ばれ、免疫の記憶がしっかり残るため、1回の接種で長期間(生涯?)の予防効果が期待できるのが特徴です。また、2026年4月からはプレベナー20のみが65歳定期接種の対象ワクチンとして指定されました。
さて、ここでいきなりですが、私の意見(推奨)を先に述べちゃいます。
・65歳の方 → プレベナー20(定期接種)
・65歳未満、または66歳以上の方 → キャップバックスかプレベナー20
・ワクチンの効果よりもとにかくお値段(安さ)最優先の方 → ニューモバックス
となります。では、順番にお話ししますね。
…あ! その前に、肺炎球菌の「血清型」について少し補足を…。
実は肺炎球菌は1種類ではなく、菌の表面を覆う膜(莢膜)の構造や種類によって100種類以上のタイプ(血清型)にわかれます。この血清型によって毒性や薬剤耐性が異なる、つまりは肺炎を起こしやすい・起こしにくい、治療が効きやすい・効きにくいといった分類がなされるわけです。ワクチンの「血清型カバー率」という単語が以後でてきますが、これは、「どれだけ多くの種類の肺炎球菌を防げるか」を示す指標であり、ワクチンの効果を考える上で重要になってきます。
ちなみに、現在報告されているカバー率は…
・キャップバックス :約78~80%
・プレベナー20 :約45~50%
・ニューモバックス:約50%前後
と、キャップバックスが最も広い範囲をカバーするとされています。
① キャップバックス

キャップバックスは、成人の感染状況に基づいて開発された、いわゆる「大人用の」肺炎球菌ワクチンです。含まれている血清型は21種類で、特に近年成人で増加している型や重症化しやすい型が組み込まれています。そのため、肺炎球菌感染症の約78~80%という高いカバー率を示しており、現在のワクチンの中でも最も広い予防範囲を持つとされています。
さらに、結合型ワクチンであるため免疫の記憶が長く持続し、基本的に1回の接種で長期的な予防効果が期待できます。従来のように5年ごとに接種を繰り返す必要がない点は、大きなメリットです。
このワクチンは特に、66歳以上で初めて接種する方の中でも、よりしっかり予防したい方に向いています。心臓病、糖尿病、慢性呼吸器疾患、腎臓病などの持病がある方や、免疫力が低下している方では肺炎の重症化リスクが高いため、より広いカバー率を持つこのワクチンのメリットが大きくなります。当院では定期接種の対象外の方はこちらを接種することが多い状況です。
② プレベナー20

プレベナー20は、現在の高齢者肺炎球菌ワクチンの標準となるワクチンです。2026年4月からは65歳の定期接種で使用されており、制度上の中心的な役割を担っています。
このワクチンも結合型ワクチンであり、免疫の記憶が長く続くため、1回の接種で長期間の予防効果が期待できます。対応している血清型は20種類で、日本において重要とされる肺炎球菌を広くカバーしています。
カバー率は、重症感染に対して約45~50%、肺炎に対しては40~60%程度とされており、標準的な予防効果を十分に備えています。キャップバックスと比較するとカバー範囲はやや狭いものの、これまでの使用実績が豊富で、安全性や有効性に関するデータが蓄積されている点が大きな安心材料です。
また、65歳の方は定期接種として公費で受けることができるため、費用面でも受けやすいという利点があります。66歳以上で初めて接種する方にとっても有効な選択肢であり、「シンプルに選びたい」「制度に沿った方法で安心して受けたい」「費用とのバランスも考えたい」という方に向いています。
■ ③ ニューモバックスNP(従来から使われてきたワクチン) ¥8,000

ニューモバックスNPは、長年にわたり使用されてきた肺炎球菌ワクチンで、正式には「多糖体ワクチン」と呼ばれます。23種類の血清型に対応しており、かつては高齢者の定期接種の中心となっていました。
このワクチンは幅広い血清型に対応しているのが特徴ですが、結合型ワクチンとは異なり、免疫の記憶が長く続きにくいという性質があります。そのため効果は時間とともに低下し、一般的には約5年ごとの再接種が必要とされてきました。また、重症感染に対する予防効果は約50%前後とされており、現在主流となっている結合型ワクチンと比較すると長期的な免疫の持続という点で効果は劣ります。
現在では、初回定期接種の主役はプレベナー20に移っており、「過去のワクチン」としての位置づけになっています。ただし、過去にニューモバックスを接種したことがある方の再接種の検討においては今でも重要なワクチンです。「以前にニューモバックスを打ったことがある」という方は、医師にしっかりお伝えしてくだいね。
~ 最後に~
肺炎は高齢になるほどリスクが高くなりますが、ワクチンによって予防できる病気です。現在はワクチンの選択肢が増え、「標準的な予防」と「より広い予防」を自分に合わせて選べる時代になりました。
改めて、さらにシンプルにまとめると、
・65歳ぴったり → プレベナー20を定期接種で
・それ以外の年齢の方 → キャップバックス>プレベナー20>ニューモバックス(おすすめ度・効果・値段もすべてこの順番)
というのが私見になります。(まとめすぎ!?)
どのワクチンを選ぶかは、年齢や接種歴だけでなく、「どこまで予防したいか」「費用とのバランスをどう考えるか」によっても変わります。迷った場合は主治医と相談しながら、自分に合ったワクチンを選ぶことが大切です。肺炎をしっかり予防し、安心して日々を過ごしていきましょう。






