長引く咳にご用心⑤ アトピー咳嗽とは?|山の手内科クリニック|神戸市の内科、呼吸器内科、アレルギー科

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医療コラム

長引く咳にご用心⑤ アトピー咳嗽とは?|山の手内科クリニック|神戸市の内科、呼吸器内科、アレルギー科

お久しぶりです!

前回のコラムからかなり日がたってしまいました(汗)。当院のコラムを待ち望んでいた方(!?)、大変申し訳ございません。

 

さて、これまで4回にわたって「喘息」に焦点を当ててお話してきました。少しでも皆さんの理解が深まれば幸いです。

 

ちなみに、「咳喘息」という言葉もよく耳にされると思います。

どちらも気管のアレルギーによる炎症が原因でおこる病態で、基本的に治療方針も全く同じになります。

気管が過敏になってゴホゴホ咳だけが続くのが咳喘息、さらにひどくなって炎症が進み、気管が細くなってヒューヒュー、ゼイゼイいうと喘息、というイメージでよいと思います。

 

実際の当院の外来ではこの咳喘息、つまり喘息の一歩手前の状態で来院される方が多数を占めております。咳が長引いている皆さん、喘息に移行して悪化する前に早めにご来院くださいね。

 

 

これからは、この喘息・咳喘息以外の長引く咳の原因を紹介していこうと思います。

 

まず1つ目は、「アトピー咳嗽」です。

咳喘息とともに近年増えていると言われておりますが、あまり認知度は高くはない疾患と思われます。聞いたことはありますでしょうか?

 

アトピー咳嗽は

「中枢気道を主座とする好酸球性炎症および気管支壁表層のカプサイシン咳感受性の亢進」

と定義されます。(1)

 

…ナンノコッチャ……。ですよね。(笑)

一般的に、気道粘膜には咳受容体とよばれるセンサーが存在します。気道に入った異物(痰・ホコリ・冷たい空気などどんなものでも)を感知すると、この咳受容体から脳に信号が届き、咳が出ます。これは体の正常な防御機能になります。 

アトピー咳嗽の患者さんはこの「咳受容体の感受性」が上がり過ぎているため、通常では咳がでないような弱い刺激や会話などで必要以上に反応してしまい、咳が誘発されます。

 

一応、診断基準も定められています。(1,2)

・喘鳴や呼吸困難を伴わない乾性咳嗽(空咳)が3週間以上持続
・喘息治療で用いる吸入薬(気管支拡張薬)が無効
・アトピー素因がある(アレルギー性鼻炎の合併、血中好酸球・IgE上昇など)
・抗ヒスタミン薬/ステロイド薬で咳嗽が改善する

 

……うーん、これもやっぱりわかりにくいですよね。(笑) 

 

ですので、アトピー咳嗽の特徴をもう少しかいつまんでお示しします。

ズバリ、以下の5点です。

・アレルギー歴(特にアレルギー性鼻炎)がある中年女性に多い
・喉のかゆみ・イガイガ感がある
・会話時や笑った時、運動時、冷気・ホコリなどで誘発される
・痰は少ない(空咳がメイン)
・喘息治療で使う吸入薬(SABA:メプチンなど)や飲み薬(LTRA:モンテルカスト)が効かない 

 

少しはイメージしやすくなったでしょうか?

 

個人的には、2つめの「喉のかゆみ・イガイガ感」と、5つめの「喘息治療の効きが悪い」点を重要視しています。(3)

ですが、実際には咳喘息とアトピー咳嗽、どちらもアレルギー疾患に分類されているだけあって明確に見分けるのが難しい場合も少なくありません。

 

ですので、長引く咳を主訴に来院される方にはこれらの特徴の有無を確認し、どちらがより疑わしいか考えつつ、投薬内容を決定しております。はじめに咳喘息と診断して吸入薬などを使用するも改善が乏しいため、アトピー咳嗽として治療を変更したところ咳が治ったというケースも多々経験します。

 

ちなみにアトピー咳嗽に対して効果があるのは抗ヒスタミン薬といって、よくアレルギー性鼻炎などで使用されるジャンルのお薬です。具体的にはロラタジン、ベポタスチン、レボセチリジン、ビラスチン、オロパタジンなどの薬が該当します。

 

これでアトピー咳嗽の話はおわりです。

このような疾患もあるんだなあ、ぐらいで覚えていただければと思います。

 

 

さて、ここまで呼吸器のコラムを進めたところで少し気づいたのですが、

 

(今後順番にお話しする予定ですが)長引く咳の原因には肺がんや肺結核、抗酸菌症、間質性肺炎、副鼻腔気管支症候群、COPDなどのレントゲンやCT検査で診断がつく疾患、場合によっては命に関わる疾患もたくさんあります。

 

頻度の多さから風邪・感冒後咳嗽、喘息、アトピー咳嗽と話を進めておりますが、これらはあくまで画像検査でこのような異常がない場合、または症状から強く疑わない場合、のお話です。

この点、ご注意ください!ただの咳だからと何でも風邪や喘息と安易に考えるのはキケンです。(これは呼吸器コラムの一番はじめにお話しておくべき内容でした。すみません。)

 

個人的な経験ですが、咳が続くためクリニックを受診し、喘息と言われ吸入薬を使用するも全然改善がなく、それでも半年以上検査もせず喘息治療をされ続け、そのうち血痰も出てきたため病院を受診され、レントゲンをとったら肺がんだった、というケースが昔ありました…。このようなことがないよう、私自身も日々注意しております。

 

 今回はここで終わりです。

次回のコラムはCOPD(たばこ病)についてお話したいと思います。

よろしくお願いします!

 

  1. 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019.メディカルレビュー社,2019
  2. J Asthma 31 : 463―472, 1994.
  3. Respirology 18 : 1278―1279, 2013.
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