糖尿病④ 経口血糖降下薬 ~その2~|山の手内科クリニック|神戸市の内科、呼吸器内科、アレルギー科

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医療コラム

糖尿病④ 経口血糖降下薬 ~その2~|山の手内科クリニック|神戸市の内科、呼吸器内科、アレルギー科

前回の続きです。

④ SU薬:グリメピリド、グリクラジド

SU薬は昔から使われている、血糖値を強力に下げる薬です。この薬は膵臓のβ細胞に結合してインスリン分泌を強力に促し、短時間で血糖降下作用を発揮します。また作用時間も1224時間と比較的眺めの薬です。

このSU薬、血糖値が高くても低くても飲めばインスリンを叩き出し、「問答無用に」血糖が下がります。ですのでこれまで述べてきたメトホルミンやDPP4阻害薬などと異なり、低血糖のリスクが大幅に上昇します。またインスリンの分泌が増えてブドウ糖が取り込まれるようになる結果、「体重増加」のリスクが上昇します。

 

経口血糖降下薬の種類が限られていた昔は糖尿病治療の主役でしたが、今は使う頻度がかなり少なくなっています。

 

と入っても、実臨床ではもちろん使用されるケースが存在します。これまでお話したメトホルミン、SGLT-2阻害薬、DPP-4阻害薬を使用していてもどうしても血糖値が高く推移するときに、SU薬は空腹時血糖を中心に全体的に血糖値を下げてくれます。また、11回の内服でよい点、薬価が安い点も評価できるポイントです。

個人的にSU薬は少量を使用することが大事と考えています。グリメピリドであれば0.51mgの使用で十分だと思っています。(因みに添付文書では維持量14mg、最大6mgと記載がありますが、正直こんな量を使うと低血糖が怖すぎます…)

 

とにもかくにも、SU薬を使用する際は低血糖症状に注意してください。(低血糖症状って何?という方は「糖尿病① 糖尿病とはどんな病気か」を見てください!

糖尿病① 糖尿病とはどんな病気か

 

⑤ α-GI:ボグリボース、アカルボース、ミグリトール

α-GIは食後高血糖に対するスペシャリストです。食事の直前に内服することで食後高血糖をピンポイントで改善させます。

詳しい機序は省きますが、この薬は食事中の炭水化物を糖へ分解するαグルコシダーゼに結合してその作用を阻害します。その結果、糖の吸収が遅延し、血糖値の上昇を抑えます。また先ほどのSU薬のようにインスリン分泌を直接刺激するわけではないので、低血糖のリスクもありません。

 

と、この作用からわかるように、この薬は食前血糖(=空腹時血糖)を下げる作用はありません。あくまで「食後高血糖」の治療薬です。空腹時血糖も高い場合はこれまで紹介してきた薬が優先して使用されます。

 

そして、この薬には難点が2つ存在します。

1つはアドヒアランスです。この薬は食直前に飲む必要があります。一般的に薬は食後内服のものが多く、その中で食直前の薬が入ってくると患者さんも混乱しがちです。「まだ余っているので、今日は食前の薬はいりません」と言われることも多々あります(笑)。

もう一つは消化器系の副作用です。具体的には腹部膨満感、下痢、放屁の増加などです。使用する際は最小量から使いますが、それでもこれらの症状が出ることがあります。

 

これらの2つのハードルをクリアできれば、十分に作用を期待できます。また、アドヒアランスに関してどうしても難しい場合は、他の薬もまとめて食直前に飲んでしまうのもありだとは思っています(個人的な意見ですが)。

 

⑥ グリニド薬:レパグリニド、ミチグリニド

グリニド薬もα-GIと同じく、主に食後高血糖をピンポイントで改善させるために食直前に飲む薬です。しかし作用機序が異なり、SU薬と似たような機序で膵臓β細胞に作用してインスリン分泌を促進することで効果を発揮します。ですので、SU薬ほどではないですが、低血糖のリスクがあります。一方で、α-GIでみられた消化器系の副作用はみられません。

個人的には食後高血糖の患者さんには低血糖のリスクを考慮してα-GIを優先して使用していますが、それでも効果が不十分な場合には、少ない量からグリニドを併用することを検討しています。

 

この薬も、やはりハードルになるのはアドヒアランスです。主治医の先生と相談し、内服のタイミングをまとめたり、一包化するなどの工夫をしてみましょう。

 

⑦ GLP-1受容体作動薬:リベルサス

詳しくは糖尿病注射薬のコラムでお話する予定ですが、糖尿病治療の分野で現在最も注目されているのがGLP-1作動薬です。これは血糖依存性に膵β細胞からインスリン分泌を促す薬になります。(作用機序はDPP-4阻害薬と似ています)

 

優れた空腹時、食後高血糖の改善効果があるだけでなく、低血糖リスクも低く、体重減少効果が認められています。そして何よりも心血管イベントのリスクを有意に低下させることが実証されました。正直、いいことづくしです。

 

GLP-1作動薬はこれまで主に注射薬として使用されていましたが、なんとその経口薬が登場したのです。ここ最近、痩せ薬としてもニュースになったりしたので知っておられる方もいるかもしれません。「リベルサス」という薬です。

 

リベルサスは「113mgから開始し、4週間投与後に7mg/日へ増量する。効果不十分な場合は最大14mg/日に増量できる」と添付文書に記載があります。実際に、用量依存的にHbA1c低下作用や減量効果が高まります。

 

一方で注意点はざっくりと2つあります。1つは副作用で、悪心・嘔吐、下痢、便秘といった消化器症状があります。

もう1つは(こちらの方が大事ですが)飲み方です。食事と一緒に飲むと効果が吸収がガタ落ちし、効果が大きく減弱します。「空きっ腹に少量の水で内服し、30分以上絶食で待つ」のがポイントです。これは必ず守る必要がある、というか守れないなら飲むだけお金の無駄となってしまいます。

巷では痩せ薬として自費診療でも処方されることがある薬ですが、それぐらい減量には効果があります。ですので、肥満の2型糖尿病患者さんには最適な治療薬の一つと考えます。

(経口薬で減量効果のエビデンスがしっかりあるのはSGLT-2阻害薬とこのGLP-1作動薬のみです)

 

あと、注意点ではないですが、薬価が高いです。通常量の7mg1錠で334円もします。(一方、メトホルミンやSU薬は10円前後)

このあたりは患者さんと相談が必要ですね。

 

 

さて、糖尿病の内服薬に関して2回にわけてざっくりと解説してきましたが、如何でしたでしょうか?糖尿病治療中の方、これから治療が始まる方、予備軍と言われている方、いろんな方がおられると思いますが、少しでも皆様の理解が深まれば幸いです。

 

次回は糖尿病の注射薬について、説明したいと思います。

 

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