健康寿命を延ばす食事とは|山の手内科クリニック|神戸市の内科、呼吸器内科、アレルギー科

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医療コラム

健康寿命を延ばす食事とは|山の手内科クリニック|神戸市の内科、呼吸器内科、アレルギー科

「医食同源」ということばをご存知でしょうか。

健康の増進のためには医療も食事も本質的に同じで、どちらも重要だとする考え方です。

 

食事に関する様々な研究がこれまで行われてきましたが、現在、寿命を延ばす最強の食事と言われているのが「地中海食」です。その名の通り、地中海沿岸のイタリアやギリシャなどで愛されている食事です。

 

地中海食の特色をいくつか挙げてみます。

・全粒穀物、果物、野菜中心の食生活
・料理にはナッツ・オリーブオイルを使用する
・赤身のお肉は少なく、魚を多く摂取する
・卵の摂取は週4個未満
・食事の際にワインを飲みすぎない程度に摂取する
・加工食品はできるだけ摂取しない

これらが特色・定義とされています。

メインディッシュに魚料理を選択した時のイタリアンコース料理のイメージが近いかもしれません。全粒穀物とは玄米・全粒粉の小麦を使用したパンやそばなどが該当します。

 

どうやら昔から地中海周辺の人々は高血圧・糖尿病といった生活習慣病の患者が少なかったようで、この食事については色んな研究が行われてきました。その結果、心筋梗塞などの心臓病のリスクが30%程度減少、脳卒中・認知症、うつ病の発症リスクが低下、糖尿病になるリスクが低下、健康寿命が延びた、といった様々な体に良い影響が示されています。(1)

また、この「地中海食」はダイエットにも良いみたいです。最近流行りの「低炭水化物食」との比較研究では、最初の34ヶ月の減量ペースこそ低炭水化物食に劣るものの、2年程度のスパンで見るとダイエット効果としては地中海食も同程度であったようです。(つまりは、低炭水化物食はリバウンドしやすいということも浮き彫りになりました)(2)

 

ということで、さあ皆さん、今日から地中海食を食べましょう!

 

………と言いたいところではあるのですが、実は問題点が1つあります。それは、「そもそも日本人の食生活にあまりなじみがない」ということです(笑)。例えばナッツが食卓に上がる頻度は少ないですし、シーフードパエリアやアクアパッツァを習慣的に食べる日本人も少ないでしょう。ですので、現実的には地中海食を完全に真似するのは難しいと思います。

 

しかし、地中海食のメニューに固執する必要は実はありません。というのも、地中海食は「和食」と部分的に共通しています。ですので、和食に地中海食テイストを取り入れるのが日本人にとっての一番の食事かもしれません。

 

例を挙げると

・和食の調理でオリーブオイルを使用する
・酒はビールよりもワイン
・白米に玄米をまぜたりして全粒穀物を増やす
・味噌汁・漬物は薄味にする
・酒のつまみはナッツ系にする 

といったところでしょうか。オリーブオイルは、なたね油(キャノーラ油)でもいいでしょう。

 

また、和食には欠かせない「発酵食品」も良さそうです。9万人の日本人を対象に行われた研究では、発酵させていない大豆系の食品(豆腐など)の摂取量は寿命に関係しなかった一方、納豆や味噌などの発酵させた大豆食品を多く摂取すると死亡リスクの低下につながる可能性があると報告されています。(3)

巷のイメージ通り、納豆や味噌の健康効果はありそうです。ですので、地中海食のいい部分を取り入れ、各々の健康にとって最適な食事を見つけていきましょう。(ちなみに私は納豆が苦手なので取り入れていません(・_・))

 

 

話を少し変えて、ダイエットについてお話します。

巷には様々なダイエット法がありますが、今最も流行っているのが「低糖質ダイエット」です。(「低炭水化物ダイエット」とも言われます)

代表的なものでは「ローカーボダイエット(ロカボ)」といって1食の炭水化物摂取量を2040グラム程度に抑えるダイエット法があります。その他にも様々な「低糖質ダイエット」が存在します。

 

この低糖質ダイエット、結論から言うと「短期的」に痩せることができます。その初速は圧倒的で、平均して3ヶ月で約6kgの減量効果を認めたデータもあり、エビデンスも確立されています。(2)

 

しかし、一方でこの低糖質ダイエットを「長期的に」行ったらどんな影響が出るでしょうか。

まず、上で述べたようにリバウンドしやすいようで、6ヶ月を越えたあたりから体重が増える傾向があるようです。他にも、糖質をカットした分、豚肉・牛肉などの動物性タンパク質や飽和脂肪酸(質が悪いとされている脂質)で食事を代用した人は死亡率が上昇した、という報告や、野菜や全粒粉のパンなど植物性のタンパク質を多く摂取していた人の死亡率は減少した、という結果が出ています。(4)

 

ですので、糖質や炭水化物のカットによる短期的な減量効果は間違いないようですが、長期的な視点からは「代わりを何で補うか」を意識しつつ「リバウンドに注意」するのが大事かと思われます。糖質は脳の唯一のエネルギー源ですので、糖質制限は実際やってみるとストレスも大きいようです。そのためリバウンドで当初よりもむしろ体重が増えてしまうことも多いため、やり過ぎには注意してください。

 

この低糖質ダイエットと地中海食・和食メインの食事をうまく組み合わせて、短期的・長期的にも結果を期待できるダイエットを続け、健康寿命を延ばしていきましょう。

 

さて、ここまで色々と理想的な食事についてお話してきましたが、、、

「言うは易く行うは難し」という言葉があります。食生活・運動習慣の改善は本当にその通りで、実際に実行するのはなかなか難しかったりします。私も患者さんに食事指導をすることは多いですがなかなか思い通りに実行できない方も少なくありません。

いきなりガラッと生活習慣を変えるのは難しいと思いますので、まずは食事の中でも一部分だけ、例えばお米を玄米に変えるとか、油をオリーブオイルに変えてみるとか、できることからやってみては如何でしょうか。

 

私自身も、クリニック開業準備以降からずっとバタバタしており、食事・運動が疎かになっているのは否めず、自分への戒めとしつつこのコラムを書いております(汗)。健康あっての仕事、「医者の不養生」にならないよう私自身も気をつけていきたいと思います。

 

では、今回はここまで。
引き続き、健康に関する食事についてお話を続けたいと思います。

 

  1. N Engl J Med. 2013 Apr 4;368(14):1279-90
  2. N Engl J Med. 2008 Jul 17;359(3):229-41
  3. BMJ. 2020 Jan 29;368:m34
  4. JAMA Intern Med. 2020 Apr 1;180(4):513-523.
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