食事に関して、実は「この食べ物は体に悪い」とエビデンス的に証明されているものがあります。順番にいくつか説明してみます。
① 赤身肉、加工肉
まずは「赤身肉」「加工肉」です。赤身肉とは牛肉、豚肉などの文字とおり見た目が赤い肉、加工肉はベーコン、ソーセージ、ハム、スパムといった加工して精製された肉類です。
2015年、IARC(国際がん研究機関)の発表で、この加工肉はグループ1(人に対して発がん性がある)、赤身肉はグループ2A(おそらく発がん性がある)になっています(1)。このグループ1にはアルコール、ピロリ菌、喫煙といった人間の体への有害性を代表するものが含まれていますが、その中に加工肉がエントリーしてしまっているのです。
赤身肉についても、「食べる量が1日65グラム増えるごとに子宮がん、肺がん、食道がん、大腸がん、糖尿病などのリスクが上がる」という結果が報告されています(2)。因果関係ははっきりしないものの、赤身肉の色素成分である「ヘム」が大腸がんのリスクを上げているという説があります。
ですので、「メインディッシュは肉か魚か?」という質問に対して、健康のことだけを考えると言うまでもなく「魚」に軍配が上がります。まず、魚に含まれるオメガ3脂肪酸は心臓病予防のエビデンスが証明されており、また魚そのものに関しても摂取量が1日60グラム増加すると死亡リスクが12%も低下したというデータがあります(3)。
もちろん、これらのお肉を絶対に食べてはいけない、なんてことはありません(やっぱり美味しいですからね)。日常的にたくさん食べるのは避けて、普段は魚、時折お肉、という方が望ましいのは確かでしょう。
また、お肉に関しては赤身肉から白身肉(鶏肉)への変更も良いかもしれません。この白身肉に関しては、人体への有害性は証明されていません。
② マーガリン
マーガリンが好きで、朝食にパンに塗る方も多いと思います、しかし、実はマーガリンは現在アメリカでは「販売禁止」となっています。マーガリンに含まれる「トランス脂肪酸」が体に悪影響を及ぼしているというエビデンスがあるためです。
このトランス脂肪酸を摂取することでLDL(悪玉)コレステロールが増加し、HDL(善玉)コレステロールが低下したというデータがあります(4)。この両方ともが心筋梗塞や脳卒中につながる「動脈硬化」を進行させますので、相乗効果で体に害を及ぼします。
その他にも糖尿病や認知症になりやすいなった、という研究も存在し、アメリカ、カナダ、台湾、タイなどの国ではトランス脂肪酸の使用が禁止されています。
一方、日本ではスーパーでも普通に売られています。何で?と思われるかもしれませんが、厚生労働省の言い分は以下の通りです。
「1日の摂取エネルギーの中で1%以上摂取すると健康上の影響が出現すると言われているトランス脂肪酸に対して、日本人の平均摂取量は0.3%程度であり、健康上問題はない。」
つまり、「海外と違って日本人は普段からあんまりトランス脂肪酸を摂取しないから、別に規制しません」ということです。確かにそれはそうなのかもしれませんが、、、日常的にたくさん摂取するのは基本的にやめた方がよさそうです。ご注意ください。
③ 砂糖入りコーヒー、エナジードリンク
読者の中には朝に缶コーヒーで眠気を覚まし、昼にエナジードリンクでカロリー補充、というビジネスパーソンの方もおられるかもしれません。
しかし、この習慣はキケンです。どちらの飲み物も「砂糖を多量に含んでいる」からです。例えば、かの有名なエナジードリンク「レッドブル」には、1本で約7個分の角砂糖が含まれています。缶コーヒーには約3個分含まれています。
砂糖には「薬物中毒に似た依存性がある」という研究もあります。糖質をたっぷり含んだ液体を毎日のように飲む習慣がついていたら糖尿病のリスクはもちろんのこと、肥満、心筋梗塞、虫歯、がん、認知症、脂肪肝など様々な病気につながります。
ですので、このような飲み物は毎日ではなく、「たまに飲む飲み物」だと認識してください。エナジードリンクの力を借りて頑張り続けることはいわば「健康の前借り」です。働き盛りの方々の今後の長い人生を考えると決して良い選択とは言えません。注意してくださいね。
余談ですが、では人工甘味料はどうでしょうか。「アスパルテーム」「アセスルファムK」「スクラロース」は有名な人工甘味料ですが、実は「人工だから体に悪い」といったデータは存在しません。普通の砂糖と違ってブドウ糖が含まれていないので「血糖値を上げない」というデータがあります(5)。まだ研究の余地がありますが、少なくとも現段階では砂糖以上に体に悪いというデータはありません。過度に気にしすぎる必要はないでしょう。
ただ、「ゼロカロリージュース」には少し気をつけてください。「ゼロカロリー」の基準は「食品100グラムあたり5キロカロリー未満、飲料100mlあたり5キロカロリー未満」ですので、本当にゼロというわけではありません。人工甘味料はゼロカロリーの基準を満たしつつ食品や飲料を甘くすることができるのでコンビニによく並んでいますが、やはり毎日飲むのはよくなさそうです。
④ アツアツの飲み物
「ん?何を言ってるの?」と思われるかもしれませんが、どうやら「熱い飲み物」も体にはよくなさそうです。というのは「食道がん」との関連性が示されているのです。
約5万人を対象に行われた研究では、「70度を超える熱いお茶を飲む人は、65度以下のぬるいお茶を飲む人より、食道がんの罹患率が8倍高かった」という結果が出ました(6)。その他にも同様の研究結果が複数存在します。
はっきり証明されていませんが、熱い飲み物が食道の内側の粘膜を損傷させることが原因と言われています。IARC(国際がん研究機関)でも、65度以上の飲み物はグループ2(おそらく発がん性がある)に分類されています。
ただ、これもエナジードリンクと同様、習慣化していなければそこまで神経質にならなくてもよいと思います。「毎日、毎食後にアツアツの紅茶を飲みます」というような人は頻度を減らす方がよい、といったところです。お茶やコーヒーを高温で飲む習慣がある人は注意しましょう。
さて、ここまで体に悪い食べ物の代表をいくつか紹介しました。
お気づきの方も多いかと思いますが、これらの食事は食べてすぐに次の日に健康が害されるわけではありません。これらの摂取の日々の積み重ねが病気のリスクにつながるわけです。
「ダイエットは習慣が9割」の本の話を糖尿病のコラムでお話しましたが、食事も全く同じです。まずはご自身の食生活を見直し、常用的に摂取している人は習慣から変えていきましょう。
では今回はここまで。
次回は、体に良い食べ物(以前の地中海食の話とは別で)をご紹介します。
- Lancet Oncol. 2015 Dec;16(16):1599-600.
- Eur J Clin Nutr. 2018 Jan;72(1):18-29.
- Eur J Clin Nutr. 2016 Feb;70(2):155-61.
- Food Chem Toxicol. 2016 Dec;98(Pt B):269-281.
- Br J Nutr. 2011 May;105(9):1320-8.
- BMJ. 2009 Mar 26;338:b929.