がん検査のあれこれ~腫瘍マーカーと被ばくについて|山の手内科クリニック|神戸市の内科、呼吸器内科、アレルギー科

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医療コラム

がん検査のあれこれ~腫瘍マーカーと被ばくについて|山の手内科クリニック|神戸市の内科、呼吸器内科、アレルギー科

さて、がん予防の最後の回となりました。これまで予防医学のなかでもがん予防に焦点を当ててお話してきましたが、いかがでしたでしょうか?ちょっとでも皆さんの知識や健康につながれば幸いです。

タイトルにもありますように、最後は2つほど雑談をして終わりたいと思います。

 

1つ目は「腫瘍マーカー検査」です。これまでに受けたことがある方も多いのではないでしょうか。

腫瘍マーカーとは、「がん」が体に存在する時に血液中に増加するタンパク質やホルモンのことで、血液検査で確認することができます。例えば、CEA(肺がん、胃がんなど)、CA19-9(膵臓がん)、CA125(卵巣がん)、などです。検診・人間ドック機関の中にはオプション検査としてこの腫瘍マーカーの測定を採用しているところもあります。がんが疑われる患者さん、がんが確定した患者さんのフォロー目的に保険診療で実施することもあれば、上記のように健康な方を対象に検診など自費診療で実施されることもあります。

 

さて、この腫瘍マーカーですが、がんが確定している方、がんの治療中の方、術後の方などに対する治療評価や再発のチェックとしては有用な検査だと考えています。私自身も肺がんの患者さんに対してCEA(肺腺がん)やシフラ(肺扁平上皮がん)、PRO-GRP(肺小細胞がん)といったマーカーの検査を行ってきました。

 

しかし一方で、健康な人が健康診断で受けても「ほとんど意味がない」、「受けてもムダ」な検査だと私は思っています。というのも、ほぼ全ての腫瘍マーカーは「早期発見」にはまったく役に立たない検査だからです。(他にも、「ア◯ノインデックス」という採血一本でがんや生活習慣病の予想ができる高額な検査が存在しますが、、、もはやノーコメントとしておきます。とりあえず、本当に有効なのであれば早く保険収載されてほしいですね。私だったらその費用をCT検査に回しますが。。。)

 

肺がんのCEAという腫瘍マーカーで考えてみましょう。このCEAは5ng/ml以下が基準値なので、5を超えると陽性とされます。健常人に対してこのCEAの測定が役に立たないのは、「がん以外の要因でもCEAが上昇してしまう」からです。例えば糖尿病などの生活習慣病でも上昇しますし、喫煙しているだけで上がることもあります。

たまに検診の結果から「CEA陽性 精査依頼」という紹介がなされることもありますが、正直、判断が難しいです。上記のようにがん以外の要因でも上昇するため、健康な人にさらに精査をしても異常がないことも多く、とはいってもマーカー高値と言われた方は大きな不安や、もやもやが残ると思います。この検査を行うことで無駄に心配事が増え、幸福度が下がってしまうおそれもあり、健康な方に対して行うには微妙な検査と言わざるを得ません。

 

しかし、唯一役に立つとすれば「大幅に腫瘍マーカーが上昇している場合」です。例えばCEAなら10ng/mlを超えていれば「強陽性」とされ、この場合はがんの可能性が高くなります。

、、なのですが、残念ながらこの強陽性が出るのは早期がんより進行がんの場合の方が多く、早期発見にはやはり不向きなのです。腫瘍マーカーで測定するよりも、早期がんの発見に有効な(これまで紹介してきた)他の検査を受けることをお勧めします(唯一、前立腺がんのPSA検査に関しては、以前のコラムでお話したように私も有用と考えております)。

 

もちろん、この検査に対する考えは千差万別だと思うので、絶対に測るなとは言いません。しかし、費用対効果の悪い検査であることは認識し、上記のメリット・デメリットをわかった上で検査を受けてほしいと思っております。

 

 

2つ目は検査における「放射線被ばく」についてです。

胸のレントゲン検査、胸やお腹のCT検査を受ける時などに、被ばくを心配される方が多くいます。被ばくについて少し真面目に説明してみます。

人が放射線にさらされると、「体の設計図」の役割を果たすDNAが損傷します。損傷したDNAは、擦りむいた傷が治癒してかさぶたになるように、傷ついた部分の修復作業を行います。ダメージが小さければ元通りに修復されるのですが、ダメージが大きいと遺伝子情報が狂ってしまいます。ひどい切り傷やすり傷だと治っても痕になって残るイメージですね。この遺伝子情報の変化が、がんや白血病を引き起こす原因となります。

 

では、この「ダメージが大きい」被ばくの量はどの程度なのか。放射線被ばく量を数値で表す単位にシーベルトというものがありますが、1回の被ばく量が「100ミリシーベルト」を超えると発がんリスクが生じるとされています。例えば、原爆投下時の広島・長崎での被ばく量は、地域によっては200ミリシーベルトを超え、原爆後遺症を発症した方もおられました。

 

一方、気になるレントゲン、CTの被ばく量ですが、レントゲン撮影は1回で約0.05ミリシーベルト、CT6.9ミリシーベルト程度とされています。つまり、一度に何回も繰り返し撮影しない限り、100ミリシーベルトには到達しません。このように、基本的には検査による被ばくで症状が出ることはないと言われていますので、ご安心ください。

 

どんな検査もそうですが、メリット・デメリットがあります。例えば肺がんで抗がん剤治療中の方は、(施設にもよるでしょうが)2~3ヶ月おきに治療効果判定のためにCT検査が実施されます。これも被ばくを無視しているわけではなく、「正確な評価を行い、患者さんにその都度最適な治療方針を提示する」というメリットを「被ばくが増える」デメリットより優先して実施しているわけです(もちろん、CTを年4回実施しても被ばく量として問題ないのは上述した通りです)。

もちろん被ばく量を少なくするのに越したことはありません。ですが、画像検査は基本的に「病気の発見」のメリットの方が被ばくというデメリットを大きく上回るため、むやみに恐れて避けるべきではないと考えています。

 

さて、こんな感じで何とも締まりのない最終回となりましたが、ひとまずがん予防に関してのお話はこれで終わりとします。

 

次の内容は、、、現在考え中です。(汗)
しばしお待ち下さいね。

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