さて、予防医学・呼吸器内科コラムに続き、一般内科のコラムも始めます。こちらでは呼吸器・アレルギー系以外の内科の病気についてお話ししていきます。
まずは全員に関わる「生活習慣病」にしたいと思います。皆さん、そもそもですが、「生活習慣病」とは何か、ぱっと言えますでしょうか。
生活習慣病とは毎日の生活習慣が発症や進行に関与する「疾患群」です。食事・運動習慣はもちろん、喫煙や飲酒・睡眠といった様々な日々の習慣が含まれます。かつて「生活習慣病」は「成人病」と呼ばれていました。年齢を重ねるにつれ発症・進行するものだと考えられていたからです。
しかし、研究が進むにつれ実は成人でなくても発症する可能性があること、成人でも生活習慣の是正により予防が可能なことがわかってきました。ですので、以前は「成人病は歳をとったらいずれなるもんだから二次予防(病気の早期発見や早期治療)が大事だよね」と考えられていたのが、「実は一次予防(発病の予防)が一番大事っぽいぞ」と変わってきて、それに伴い「生活習慣病」と改名されたのです。
生活習慣病に該当する病気は多数存在します。
例えば、高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、高尿酸血症、肥満症、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝炎、慢性閉塞性肺疾患、肺がん、大腸がんなど…。
生活習慣病の多くに共通しているのは、発症しても自覚症状がなく、診断を受けた時には症状が進行していることも多い点です。また自覚症状がないため、健康診断で異常を指摘されたとしても予防や治療といった行動を起こさない方も多い印象です。
そしてもう一つ、生活習慣病の話をする時に切っても切り離せない関係にあるのが「動脈硬化」です。皆さんも名前ぐらいは聞いたことはあるのではないでしょうか?動脈硬化とは、動脈の壁に粥腫(じゅくしゅ:コレステロールと血管壁の老廃物が混じり合ってできたかたまり)がたまった結果、血管が固く、狭く、もろくなり、血液の流れが悪くなる状態のことを言います。最終的にはその血管がどこかで詰まったり破れたりしてしまい大病につながるわけですが、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病はこの動脈硬化を一気に進めてしまうことがわかっています。
この動脈硬化、全身の様々な血管で起こるものの、特に脳を栄養する血管と心臓(心筋)を栄養する血管(冠動脈)に起こりやすいとされています。そしてその血管がどこかで詰まったり破れたりすると、脳梗塞・脳出血などの脳血管障害(日本人の死因第4位)、狭心症や心筋梗塞などの心血管障害(同第2位)の原因となります(ちなみに1位はがん)。こうなってしまうと、寿命が縮まるか、寿命は変わらないとしても健康寿命が大きく損なわれることになります。
私もこれまでたくさんの脳梗塞や心筋梗塞の患者さんと出会ってきましたが、患者さんから度々聞いたのは、「まさが、自分が…」「自分だけは大丈夫だと思っていた」という言葉でした。他にも、高血圧を例にとると「高血圧の薬は一度飲み始めたらずっと飲まないといけないんでしょ。だからまだ飲まずに様子見てたんです。お金もかかるし。」とおっしゃられる方にもよく出会いました。
お気持ちはわかりますし、食生活の改善や運動などでも改善しない場合に降圧薬を飲むことになるため、確かに薬を飲み続けることになるのが多いのも事実です。しかし、だからといって予防しうる動脈硬化をわざわざ放置して脳梗塞や脳出血、心筋梗塞になってしまうと、医療費は比較にならないぐらいたくさんかかりますし、寝たきりになってしまった時にはそこで健康寿命は終わりになります。また幸い寝たきりにならなかったとしても、残存する何かしらの症状で日々悩まされながら薬をたくさん飲まなくてはいけない日々が始まります。失われるものがあまりにも大きいです。
ですので、やはり「必要な薬はきちんと飲んで予防できるものは予防しておく」方がずっとずっと大事だと思っています。(予防医学のコラムでも同じようなことを話したかもしれませんが)
私自身も内科のかかりつけ医として、「病院で大病の患者さんをカテーテルや手術で治療するかっこいいキラキラ系先生」ではなく、「患者さんにリスクをしっかりと説明してそもそも大病にならないようにしっかり治療・管理するかっこよくない地味系先生」として頑張っていきたいと思っております。
…さて、少し話が脱線しましたが(笑)、そのような理由でまずは生活習慣病に焦点を当てます。
まずは、その中でも糖尿病(正確には2型糖尿病)について、次回から詳しく解説していきます。
当院は5月開院後ではありますが、すでに高血糖のみの方、初期の糖尿病患者さん、インスリンやGLP-1注射薬を使用している患者さんなど様々な方がおられます。今後さらに増えてくるかもしれないですし、すでに通院中の方が糖尿病を発症されることもあると思いますので、是非このコラムを参考にしてください。
では、今回はこの辺で。
治療中の方もそうでない方も、是非一緒に糖尿病の知識をつけていきましょう!